皆さんは日常の会話で『ツボ』という単語を使う機会が多少あるかと思います。
人間の体や治療に関係する『ツボ』の他に、例えば笑いの『ツボ』、など『○○のポイントはこれです』といったような意味で使うことでしょうが、ここでは、東洋医学(鍼灸)で用いる『ツボ』について簡単にお話ししていきます。
ツボ(経穴)を知る前に
ツボ(経穴)は人体に『361個』あるとされています。
厳密にいうと、それ以上の数が存在するのですが、あくまでも『教科書的に』ということで理解して下さい。
皆さんはテレビや知人などから、『ここは車酔いの時に効くツボだ』、『ここは生理痛に効くツボだ』など、いくつかのツボについて話しを聞く機会があったかと思います。
しかし『何故こんな所を押すと車酔いや生理痛に効くのでしょうか?』と質問されたならば、不思議に思われる方もおられるのではないでしょうか?
ツボを理解するためには、東洋医学の経絡(けいらく)という考えについて知る必要があります。
経絡が何となくでも理解できれば、『だからこのツボを押すと効果があるんだ』ということが理解しやすくなるので、お話ししていきたいと思います。
経絡(けいらく)を知りましょう
経絡を理解するためには鉄道をイメージすると理解しやすいと思います。
私も鍼灸を学び始めた最初の頃は、そう教わりました。
東洋医学では人体には『気(き)』と『血(けつ)』というエネルギー物質が存在すると考えられています。
この【『気』と『血』】が人体を縦横無尽に巡っているからこそ、人間は生命活動が営めるのです。
『気』と『血』は勝手気ままに全身を巡っているわけではありません。
必ず決まった順路があります。そこで『経絡(けいらく)』の考えが出てきます。
『気』のとおり道は12本あります
人間には体の上下・左右・前後を結ぶ『経絡』と呼ばれる線路が12本あると考えられています。
(厳密に言うと14本+αですが、ここでは基本は12本だと理解して下さい)
この12本の線路は一筆書きのように作られていて、スタートすると全身を巡って必ず元の場所に戻ってきます。
この線路を使って運搬されているものが『気と血』で、生命活動を営むためのエネルギーをこのように全身に運ぶ訳です。
そして12本の経絡は、それぞれ五臓六腑(正確には六臓六腑です)と言われる臓腑に属し、内臓の不調や関連する経絡の運動器官に異常があるとツボに反応があらわれ、治療のポイントになってきます。
イメージは『駅』
ツボ(経穴)とは、各路線に配置された駅のような存在です。
各路線に配置された駅(ツボ)は、該当する路線(経絡)の運航が悪くなると駅(ツボ)に連絡が行き、駅(ツボ)を刺激してあげると路線(経絡)の運行が良くなり、痛みが取れていく仕組みになっています。
気と血は人間が生きている限り、運航が留まることはありません。
しかし気と血の運行が何らかの理由でスムーズに行かなくなると、体に異常があらわれます。
そしてその異常は体表のツボに反応があらわれて、そこが治療点になる訳です。
これによって、車酔いの時には手の親指の付け根のツボ(魚際 ぎょさい)が効果がある、生理痛の時には足の内くるぶし上方にあるツボ(三陰交 さんいんこう)が効く、といった具合に、一見すると関係無さそうな場所にあるツボが効果を発揮します。