東洋医学と西洋医学の考え方の相違

鍼灸治療を含む東洋医学の考え方と西洋医学(現代医学)では考え方の根本が大きく異なります。
違いのひとつに『人間の体は何が動かしているのか?』という部分だと思います。
例えば西洋医学(現代医学)では脳と脊髄は解剖学的に中枢神経として分類され、末梢神経をとおして体を支配します。
これに対して東洋医学では五臓と呼ばれる臓腑が体の構成部分や精神活動に対して中枢的な役割を果たしていると考えます。
ちなみに五臓とは肝・心・脾・肺・腎の5つの臓器を指します。

五臓はお互いが助け合い、制約しあう関係があり相互に影響を及ぼす関係が体のバランスを整え、健康を保つとされています。

以下から五臓の特徴や生理機能を簡単にお話ししていきたいと思いますが、注意して頂きたいのは、東洋医学の五臓(肝・心・脾・肺・腎)を西洋医学の肝臓・心臓・脾臓・肺・腎臓と同じだと考えてはいけないことです。
ここを同じだと考えてしまうと、東洋医学の考え方が理解できないので、別のものだと思って読み進めて下さい。

五行説と五臓の関係

紀元前の中国、春秋戦国時代頃に出来あがったとされている黄帝内経(こうていだいけい)には、五臓それぞれの関係を次のように説明しています。

  • 君主の官
  • 五臓の中では最高位に位置付けられている
  • 将軍の官
  • 『邪』と戦うための指揮命令を行う
  • 倉廩(そうりん)の官
  • 『邪』との戦闘中に食料調達、栄養補給を行う
  • 相傅(そうふ)の官
  • 心(君主)からの指令を各臓腑に伝令、指示命令の確認など君主の補佐をする
  • 作強(さきょう)の官
  • 実践/実働部隊

    心(しん)

    別称 君主の官、五臓六腑の大王
    特徴 清静を好み、躁動を嫌う
    生理機能
    1. 血脈をつかさどる
      心は全身の血および血脈、血の循環をつかさどっている。
      失調すると動悸心悸胸痛胸悶などがあらわれる。

      西洋医学的な働きと同じく、循環器系の中心だとされています。
       
    2. 神(志)をつかさどる

      心は人の精神、意識、思考活動をつかさどっている。
      神が具体的につかさどっているものは、

      a)精神・意識状態
      b)思考活動
      c)言語表現
      d)睡眠
      失調すると健忘精神疲労思考能力の低下言語錯乱不眠多夢などがあらわれる。

      『心』は循環器系だけでは無く精神機能も扱っていると考えることが西洋医学と大きく異なります。

    肝(かん)

    別称 将軍の官、剛臓
    特徴 条達を好み、抑うつを嫌う
    生理機能
    1. 疏泄をつかさどる
      気機を疏通させ、のびやかに行き来させる。
      a)臓腑の気の運行を促進する
      b)血と津液の運行を促進する
      c)脾胃の消化への協力
      d)情志活動の調節
      e)月経を調節

      疏泄とは、分泌・拡散・放出することだと解釈して下さい。
      私たちが飲酒した時の肝臓の働きをイメージしてみると、西洋医学と共通している働きだと理解出来ると思います。

      また疏泄作用には自律神経系・内分泌系をコントロールする機能があるとされています。
      自律神経系の疾患で「足の厥陰肝経」という経絡に所属するツボを用いて治療することがありますが、こういう理由もあるからです。
       
    2. 血を蔵する

      肝は血を貯蔵し、血量を調節する働きがある。
      a)人体の血量を分配する

      b)肝の陽の気が増長することを防ぎ、疏泄作用などが強くなり過ぎないようにする
      c)出血を防ぐ
      d)月経を形成する

      肝臓はグリコーゲン(糖分)を蓄えていることが知られていますが、東洋医学でも血(血は、血液の他に栄養素が含まれた物質です)が貯蔵されていることが確認されていました。

    脾(ひ)

    脾

    別称 倉廩(そうりん)の官、後天の本、気血生化の源
    特徴 乾燥を好み、湿潤を嫌う
    生理機能

    ※脾は西洋医学の解剖学上の脾臓ではなく、胃・膵臓・十二指腸・脾臓を含む消化吸収機能全般を行うものと考えられています。
    1. 運化をつかさどる
      水穀の精(気)や津液を吸収し、津液が体内に停滞しないように運搬する。

      a)水穀の精が失調すると、腹脹・軟便・消化不良・食欲不振
      b)津液が失調すると、浮腫・痰飲
       
    2. 昇清をつかさどる

      脾には水穀の精を上に輸送する働きがある。失調すると、
      a)頭顔部…めまい、五官機能低下

      b)心肺…倦怠感、めまい
      c)昇堤(しょうてい)作用の低下…内臓下垂、慢性の下痢
       

    3. 統血をつかさどる
      脾は血脈を統括し、血を脈外に漏らさないようにする働きがある。失調すると、
      a)血脈の破損による出血(外傷など)
      b)皮下出血、各種出血症(血尿・血便など)
       

    4. その他
      a)脾は営を蔵す
      b)脾は津液を作り出す

    肺(はい)

    肺

    別称 相傳(そうふ)の官、相伝の官
    特徴 貯痰の器、華蓋
    生理機能

     
    1. 気をつかさどる
      肺は全身の気の生成・運行および呼吸をつかさどる。
      失調すると、各種の気の生成不足、運行失調、呼吸困難
       
    2. 宣発(せんぱつ)・粛降(しゅくこう)をつかさどる

      a)宣発…気の上や外へ向かう運動をつかさどっている。人体中の濁気を呼気を通して体外に排出する。

      ・脾から送られてきた水穀の精と津液を頭、顔部、体表部へ散布する。
      ・衛気を体表に送り分布させて体表を守り、そう理の開閉を制御する。
      衛気とは体表や筋肉の隙間を流れ、外邪の侵入を防ぐ働きをする物質です。

      失調すると、呼気困難、嗅覚・聴覚・記憶力の低下、外邪の侵入を許しやすくなる

      b)粛降…気の下や内へ向かう運動をつかさどっている。
      ・自然界の清気(大気、天の気)を体内に吸収する
      ・脾から送られてきた水穀の精と津液を下と内に散布する
      ・呼吸道(鼻、口~肺)を清潔にする

      失調すると、吸気困難、中下焦の気・津液代謝異常、痰が貯まる・炎症

      ※宣・粛の失調
      ・全身の気、血、津液の運行失調
       

    3. 通調水動をつかさどる
      肺は水動を疏通し、津液を代謝して津液の平衡を維持している。
      失調すると、汗・尿・大便・体表部の異常

    腎(じん)

    腎

    別称 作強(さきょう)の官、先天の本
    特徴 蔵を好み瀉を嫌う、温を好み冷を嫌う
    生理機能

     
    1. 精を蔵する
      精(気)とは、人体の生命活動(生命力、成長、生殖力など)を維持する最も基礎となる物質。

      精(腎精)の働き
      a)元気を化生し、生命活動を促進する
      b)天葵を化生し、生長・発育・生殖機能を促進維持する
      c)状況を滋養する→視覚・聴覚を維持
      d)髄を生成する

      腎精が充実すると
      ・体力、気力が充実し、元気が良く、病気にかかりにくい、集中力がる

      腎精が不足すると
      ・体力、気力が不足し、活動低下、体が冷える、生殖能力低下、病気にかかりやすく治りにくい、老化現象
       
    2. 津液をつかさどる

      腎は全身の水分代謝を調節している。

      失調すると、浮腫、尿閉、頻尿
       

    3. 納気をつかさどる
      腎は呼吸活動の一部を担っている。
      失調すると、呼吸困難。